賃貸に住んでいた家族が亡くなったとき|明け渡しの順番
一人暮らしをしていた家族が、賃貸住宅で亡くなった。このとき、残された家族が最初に直面するのは「いつまでに部屋を空ければいいのか」という問題です。葬儀の最中に家主や管理会社から連絡が来ることもあります。
制度の建て付けを知っておくと、慌てずに順番を決められます。
- 部屋を借りる権利も、中の家財も、相続人に引き継がれる
- 家賃は、明け渡しが終わるまで発生し続けるのが原則
- 相続放棄を考えている場合は、部屋の物に手をつけない
- 2021年に、こうした場面に備える国の契約モデルができている
賃借権と家財は、相続人に引き継がれます
法務省は、入居者が亡くなった場合について次のように説明しています。
賃借人の死亡後、賃借権と居室内に残された家財(以下「残置物」という。)の所有権は、その相続人に承継
つまり、部屋を借りる権利は自動的に消えるわけではなく、相続人に移ります。家賃の支払い義務も、部屋の中の物も同じです。家主が勝手に鍵を開けて処分することはできません。
だから、最初にやることは「解約日を決める」ことです
家賃は明け渡しが完了するまで発生するのが原則です。片付けが1か月延びれば、その分の家賃が増えます。一方で、慌てて片付けると、必要な書類や貴重品を失います。
順番としては、次のようになります。
- 管理会社または家主に連絡し、契約の内容と解約の手続きを確認する
- 解約予告の期間(1か月前が多い)と、原状回復の範囲を確認する
- 相続人が誰かをはっきりさせる
- 相続放棄の可能性があるなら、その判断を先にする
- 貴重品と書類を先に確保する
- 片付けの見積もりを取り、作業日を決める
相続放棄を考えている場合は、部屋に入る前に相談を
民法921条1号は、相続財産を処分したときは単純承認したものとみなすと定めています。部屋の家財を運び出す、形見を持ち帰る、業者に処分を依頼するといった行為が「処分」と評価される可能性があります。
放棄を検討している段階では、部屋の物に手をつけないのが安全です。この場合、家主への説明も必要になりますので、早い段階で弁護士や司法書士に相談してください。
2021年にできた、国のモデル契約条項
単身高齢者の入居では、亡くなった後の契約解除と残置物の処理が問題になります。これに備えて、国土交通省と法務省が2021年6月7日に「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。
内容は2つの契約から成ります。賃貸借契約を解除する代理権を第三者に与える「解除事務委任契約」と、死亡後の残置物の廃棄や送付の事務を委託する「残置物関係事務委託契約」です。入居時、契約を結ぶ段階で締結しておくことが想定されています。
もし今、親が単身で賃貸に住んでいるなら、このモデル契約条項の存在を知っておくと、将来の負担が変わります。活用ガイドブックは2025年10月に第2版が出ています。
参考:国土交通省:残置物の処理等に関するモデル契約条項/活用ガイドブック(第2版・PDF)
片付けを頼むときに確認すること
- 残す物を先にリストにする。写真、手紙、アルバム、位牌、通帳、権利関係の書類、鍵
- 作業に立ち会う。立ち会えない場合は、残す物の指示を書面で渡す
- 見積書を必ずもらう。口頭の概算だけで進めない
- 追加料金の条件を確認する。物量が増えた場合、想定外の物が出た場合にどうなるか
- 家庭ごみの処分は、市町村の許可を受けた業者でなければ行えません。許可の有無を確認する
国民生活センターには、見積もりより高く請求された、残すはずの物を処分されたという相談が寄せられています。